花ある記憶――ピエール・ミション『西の皇帝』新着!!
背筋を伸ばして読む作家というのが存在する。たとえば、マルグリット・ユルスナール。彼女の小説は、読み飛ばす、流し読みをするということに向いていない。それは、たとえ比較的やさしい語彙で書かれた自伝三部作すらあてはまる。ある […]
不在の「愛の地図」――クリスチャン・ガイイ『花』
パリのメトロが大嫌いであまり乗らないようにしているのは、チケットは高いし、いつも異臭がするし、座席には寄生虫がいるかもしれないし、とにかく衛生的にも気分的にも乗りたいと思わせるものじゃないからだ。 それでもたまに、ど […]
結局、説きふせられて――ローラ・ピアニ『ジェーン・オースティンが私の人生をダメにした』
実は、今シーズンもっとも楽しみにしていたローラ・ピアニ『ジェーン・オースティンが私の人生をダメにした Jane Austen a gâché ma vie』は、期待とは少し異なる作品だった。 予告編から明らかに低予算 […]
2024年もありがとうございました
2024年も「フランス映画と女たち PART2」をはじめ、多くの皆さまにお世話になり、誠にありがとうございました。今年は、とりわけ上映会と遅滞しがちな研究を通じ、多くの方々とお会いできましたことを大変嬉しく思います。特 […]
気のいい女たち――ノエミ・メルラン『バルコニーの女たち』
まったく最近のフランス映画は伝記映画(biopic)ばかりで、たまには純粋なフィクションにどっぷりと浸りたくなってしまう。たしかにニキ・ド・サンファルもサラ・ベルナールもシャルル・アズナブールもミシェル・ルグランも重要 […]
パリの日本語の本棚――須賀敦子『ユルスナールの靴』
フランスに来ればフランス語で書かれた新刊書籍が日本の半額近くで手に入るのだし、日本語の書籍なんてほとんど読まないかと思っていた。実際、ソルボンヌの前の大型書店に行けば次から次へと読んでみたい本が目に入るのだし、図書館に […]
句読点に気をつけろ――ジャン・エシュノーズ『ジェローム・ランドン』
月曜日にいつも会う友人のパブロとは、ことごとく読書の趣味が合わない。映画の趣味もあまり合わない。きみはインテロなものが好きだからねと、よくからかってくるし、図書館のねずみ呼ばわりしてくる。インテロというのは知的なものを […]
文体の静謐さ――メイリス・ド・ケランガル『夜が深まる頃に』
翻訳するのがむずかしそうな本にいつも惹かれてきた。それが短い本だと、ものすごく惹かれてしまう。さらに言えば、翻訳がむずかしいというのは、難しい単語がたくさん出てくるとか、日本語にはない文構造をしているとか、そういう具体 […]
作家主義は時代遅れなのか――ジュヌヴィエーヴ・セリエ『作家崇拝』
現在、フランス映画批評で最も戦闘的な論者の一人であるジュヌヴィエーヴ・セリエの新刊は、ついに「作家主義」に切り込んだ。ヌーヴェルヴァーグとポスト=ヌーヴェルヴァーグの作家たちの作品へ向けられる批判のあまりの厳しさに、シ […]
形而上的な夜のあらわれ――ロベール・ブレッソン『白夜』
ブローニュの森からソルボンヌ大学、国会図書館やシネマテークのある左岸まで、毎日自転車で移動していると、必然的にセーヌ川沿いを通ることになる。セーヌ川沿い左岸の自転車専用道路を走っていると、エッフェル塔、ルーヴル、オルセ […]