書籍
あれからの深夜出版――ローラン・モーヴィニエ『私が忘却と呼ぶもの』
青色の細い線で縁取られた真っ白な表紙には、作者の名前とタイトルと出版社のロゴである星印だけ。そんな随分と簡素な装丁の書籍を刊行しつづけている、エディション・ド・ミニュイ(深夜出版)という出版社がフランスにはある。この出 […]
叫びと怒り――アブデッラー・ターイア『君の光のもとで生きる』
フランス語で小説を読むということは、フランス共和国の小説だけを読むということではない。タジンの味わい、ミントティーの爽やかさ、ジェラバの布地、そして支配と戦争の忌まわしい記憶。そうしたものも、フランス文学には書かれてい […]
ようこそ、映画館へ――メイリス・ド・ケランガル『引き波の日』
インタビューをさせてもらった縁から、親しみを込めてメイリスと呼ばせてもらっているメイリス・ド・ケランガルの新刊は、ついに一人称で書かれていた! 地の文で視点人物が次々と変化していく文体をもつメイリスの新刊を手にとって、 […]
花ある記憶――ピエール・ミション『西の皇帝』
背筋を伸ばして読む作家というのが存在する。たとえば、マルグリット・ユルスナール。彼女の小説は、読み飛ばす、流し読みをするということに向いていない。それは、たとえ比較的やさしい語彙で書かれた自伝三部作すらあてはまる。ある […]
不在の「愛の地図」――クリスチャン・ガイイ『花』
パリのメトロが大嫌いであまり乗らないようにしているのは、チケットは高いし、いつも異臭がするし、座席には寄生虫がいるかもしれないし、とにかく衛生的にも気分的にも乗りたいと思わせるものじゃないからだ。 それでもたまに、ど […]
パリの日本語の本棚――須賀敦子『ユルスナールの靴』
フランスに来ればフランス語で書かれた新刊書籍が日本の半額近くで手に入るのだし、日本語の書籍なんてほとんど読まないかと思っていた。実際、ソルボンヌの前の大型書店に行けば次から次へと読んでみたい本が目に入るのだし、図書館に […]
句読点に気をつけろ――ジャン・エシュノーズ『ジェローム・ランドン』
月曜日にいつも会う友人のパブロとは、ことごとく読書の趣味が合わない。映画の趣味もあまり合わない。きみはインテロなものが好きだからねと、よくからかってくるし、図書館のねずみ呼ばわりしてくる。インテロというのは知的なものを […]
文体の静謐さ――メイリス・ド・ケランガル『夜が深まる頃に』
翻訳するのがむずかしそうな本にいつも惹かれてきた。それが短い本だと、ものすごく惹かれてしまう。さらに言えば、翻訳がむずかしいというのは、難しい単語がたくさん出てくるとか、日本語にはない文構造をしているとか、そういう具体 […]
作家主義は時代遅れなのか――ジュヌヴィエーヴ・セリエ『作家崇拝』
現在、フランス映画批評で最も戦闘的な論者の一人であるジュヌヴィエーヴ・セリエの新刊は、ついに「作家主義」に切り込んだ。ヌーヴェルヴァーグとポスト=ヌーヴェルヴァーグの作家たちの作品へ向けられる批判のあまりの厳しさに、シ […]
クロード・シモンのインタビューを読む
先日、フランス人に、日本人はどうしてクロード・シモンに詳しいのか、いったい流行っているのかと、驚かれた。それはもちろん、平岡篤頼や芳川泰久といった日本の翻訳者たちの尽力によるところが大きいことは間違いない。『ガリバー』 […]