書籍
パリの日本語の本棚――須賀敦子『ユルスナールの靴』
フランスに来ればフランス語で書かれた新刊書籍が日本の半額近くで手に入るのだし、日本語の書籍なんてほとんど読まないかと思っていた。実際、ソルボンヌの前の大型書店に行けば次から次へと読んでみたい本が目に入るのだし、図書館に […]
句読点に気をつけろ――ジャン・エシュノーズ『ジェローム・ランドン』
月曜日にいつも会う友人のパブロとは、ことごとく読書の趣味が合わない。映画の趣味もあまり合わない。きみはインテロなものが好きだからねと、よくからかってくるし、図書館のねずみ呼ばわりしてくる。インテロというのは知的なものを […]
文体の静謐さ――メイリス・ド・ケランガル『夜が深まる頃に』
翻訳するのがむずかしそうな本にいつも惹かれてきた。それが短い本だと、ものすごく惹かれてしまう。さらに言えば、翻訳がむずかしいというのは、難しい単語がたくさん出てくるとか、日本語にはない文構造をしているとか、そういう具体 […]
作家主義は時代遅れなのか――ジュヌヴィエーヴ・セリエ『作家崇拝』
現在、フランス映画批評で最も戦闘的な論者の一人であるジュヌヴィエーヴ・セリエの新刊は、ついに「作家主義」に切り込んだ。ヌーヴェルヴァーグとポスト=ヌーヴェルヴァーグの作家たちの作品へ向けられる批判のあまりの厳しさに、シ […]
クロード・シモンのインタビューを読む
先日、フランス人に、日本人はどうしてクロード・シモンに詳しいのか、いったい流行っているのかと、驚かれた。それはもちろん、平岡篤頼や芳川泰久といった日本の翻訳者たちの尽力によるところが大きいことは間違いない。『ガリバー』 […]
ポール・オースターの思い出
ポール・オースターが死んだみたいだけれど、その報せに心を動かされていない。こんなことを言ったら、熱心なファンには怒られるだろうけれど、自分がそれほど悲しんでいないことに驚いた。 彼との出会いは、多くのひとびとと同じよ […]
本物の読書家の本棚――リンダ・レ『キャリバンのコンプレックス』
読書家は誰だって、想像上の書物について思いを馳せたことがあるはずだ。子供の頃、まだ読んだこともないし、読むこともできない本の背表紙を前にして、未知の物語が込められた魔法の壺が並んでいるかのように考えていた。そうした思い […]
21世紀の『女の一生』――エドゥアール・ルイ『ある女の闘いと変身』
子どもの時、母親が学校での面談に参加しないように手を回していた。他人に自分の母親を知られるのがいやだった――そんな感情の想起から始まる小説だ。前回取り上げた同作者の『誰が僕の父を殺したか』は作家の父親について語ったもの […]
フランス文学に新たなスターが誕生した――エドゥアール・ルイ『誰が僕の父を殺したか』
文学界のグザヴィエ・ドランとでも言える新星がフランスに登場した。男性同性愛者を取り巻く社会状況を、スタイリッシュな文体で記す91年生まれのその作家の名は、エドゥアール・ルイという。 21歳で『エディーに別れを告げて』 […]